お任せ防災とマニュアル社会

「お任せ防災」主義の人に出会うと気が滅入る。「災害が起きた時はマニュアル通りに粛々と進めるだけだ」。こういう人は想定外の事態に必ずこう言う。「想定していないマニュアルが悪い」。マニュアル外の判断を求めると「何かあった時の責任は誰がとるんだ!」。いずれも被災地支援の経験談だが、こういう人たちは災害と向き合う姿勢が欠如している。被災地支援が豊富な仲間は皆、こう力説する。「同じ災害は一つとしてない」「過去の経験を押し付けてはいけない」「マニュアルは守るものではなく運用するもの」。マニュアルやガイドラインは先人の経験の結晶だが、限界があることを支援者の言葉は物語っている。

災害対応で最も重要なことは、柔軟な姿勢と判断するチカラだ。それが人を育てることにもつながる。だが「お任せ姿勢」は社会全体に蔓延している気がする。マニュアルさえ守っていれば、自分の責任にならないのだから。今の社会は判断や対応が異なると不公平だと言い立てる。かつてアメリカの経済学者はあるファーストフードの顧客マニュアルを危険なものとして断じた。「彼らは考えず判断せずマニュアルどおりに動く。これは社会にとって有害である」。災害対応のあり方と人を育てる。これについて考えなおす時期に来ているのではないだろうか。

理事  山﨑 水紀夫