あたりまえ体操~稼いで社会の役に立つ~

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はじめまして。わたしは普段、出版社にお勤めして高知県文化広報誌「とさぶし」の編集などをやっているのですが、ここ最近、10年前のことを思い出すことが多くなりました。ちょうど大学を卒業して今の会社に転がり込んだ頃、最初の仕事は、「地域と若者をつなぐコーディネート」でした。

舞台は人口減、高齢化が叫ばれて久しい高知県嶺北地域。林業や農業、観光などの分野で未来を切り拓こうとするプレイヤーのもとに大学生を送り込み、学生には学びと成長を、受け入れ先には労働力と新しい動きのきっかけをという「いなかインターンシップ」の企画でした。

資金や協力を得るためプレゼン行脚をしたのですが、大学の先生も、お国の役人も、みんな頭に「?」マークを浮かべるだけ。「学生は一人も来ないと思うけど、ポスターは貼ってもよい」と大学の先生に許可を得て行った参加者向け説明会には18人の学生が集まり、うち16人が2週間から2か月、嶺北地域に住み込んで仕事を経験しました。

学生を受け入れた組織は、中小企業、個人事業主、NPO、第三セクターなど形態はさまざまでしたが、売上アップや販路開拓という事業上の課題だけではなく、地域の課題の一端も担うのが「あたりまえ」。社会的企業やソーシャルベンチャーという当時の流行り言葉にかぶれていたわたしは、身近なところに先駆者がいたことに驚きつつ、また次代の働き方として妙に納得したことでした。

学生たちもあたりまえのように事業と地域、両方の課題にぶち当たり、それを解決するような企画を捻りだしていきました。報告会では学内では得られない、また企業インターンシップとも少し質の違う、それぞれの成長が見えてきました。数年経って、就農したよ、とか、地域密着のスーパーに就職したよ、とか、やっぱり林業の道を行きます、など便りが届くたびに、未来って明るいかもと思えるようになりました。

このコーディネートの仕事はしばらく会社の非営利事業として活動していましたが、2009年にNPO法人を立ち上げました。大学生のインターンシップだけではなく、高校生のキャリア教育や、企業と学生をつなぐ活動も含めて≪高校+大学+新社会人=若者の10年≫を支えることが目標。NPOだけど事業をして自力で稼いで活動を続ける考えです。

稼いで社会の役に立つ――10年前に出あった「あたりまえ」を思い出し、さぁ準備体操でもして、そろそろ新しい動きでも……、鈍った体をほぐす春のこの頃です。

理事  宮脇 綾子