私は旅が好きだ。旅は3回楽しめるという。1回目は計画を立てるとき、2回目は旅行中、3回目は旅の思い出を振り返るとき。確かに、自分の旅を思い出してみても、計画を立てるときから、旅の楽しみが始まっていると感じる。
私の旅は一人旅だ。飛行機や鉄道を乗り継いで、はるか1万キロを移動し、やっと目的地に到着した時の達成感は大きい。ただし、一人旅なので、見知らぬ街にポツンと放り出されてしまったという不安も最高潮に高まる。
しかし、そんな時には、声をかけてくれる人、助けてくれる人に必ず出会う。スペインの駅できっぷの買い方がまったく分からず、キョロキョロしていた私に、まずは整理券を取るんだよと教えてくれたおじいさん。フランスの博物館で写真を撮ってあげようとジェスチャーでにこやかに伝えてくれた警備員さん。
旅を振り返ってみると、有名な観光地や博物館・美術館に感動したことを思い出すが、人との出会いも心が温かくなる大切な思い出だ。
旅に出ると、当たり前のことに気づかされる。人は支えあって、助けあって生きているということ。それは世界中のどこでも変わらない。そんな当たり前のことをちゃんと気づかせてくれるのも、旅の効能といえるだろう。
理事 仙頭 正輝