死について

最近、谷川俊太郎さんの「ぼく」という絵本を買った。
少し前に、この絵本ができるまでの様子をテレビ番組で観て興味があった。
二十数年前、子どもが生まれる前に我が家に赤ちゃんが誕生するにあたって、
当時の私として”育児にそぐわない”と判断した色んな物を処分した。
ゲーム機とか、「完全自殺マニュアル」という本とか。

この度の「ぼく」という本は少年の自死についての絵本。
この本がうちにあることが大丈夫かちょっと悩んだけれど、
我が子はそれぞれ独立してるし、思い切って買った。
この絵本を制作するにあたって、イラストの合田里美さんと谷川俊太郎さんのやりとりも紹介されていたが、
その中で合田さんが友達関係で疎外感を「ぼく」が感じていると思わせる挿絵を提案したところ、
谷川さんが難色を示した場面が忘れられない。

なぜ「ぼく」は「じぶんでしんだ」か・・・の説明というか理由付けはいらないと。
「理由なんてないんだよ。」と。
なぜ、谷川さんはそれを知っているんだろう!と心が揺さぶられた一言だった。

人は死ぬのに生まれる。
どう生きるか、どう死ぬか、何のために戦うのか、何に命を賭けるのか、命を賭ける価値とは。

一人に一つしかない命。
今私がかみしめている自由という幸せ。
これもかつて多くの先人が命を賭けて勝ち取った大切な宝物かもしれない。

理事 田中 伊緒