「大きな絵を描く」ということ

東京都大田区の住宅街に大田区立龍子記念館があります。この記念館は日本画家、川端龍子の作品を所蔵しており、一番の特徴は、龍子が自ら設計し、自費で建設したことです。生前に画家本人が自分の記念館を建設するのは珍しいのではないでしょうか。そしてもう一つの特徴は、龍子の作品です。

 龍子の作品の特徴は「大きい」ということです。横幅が7メートルを超える作品も珍しくありません。このような大きな作品は、簡単には壁面や床の間に飾れません。龍子が自ら記念館を建設したのは、自身の作品を公開する場を造る必要があったからかもしれません。龍子の大作を実際に見てみると、その迫力に圧倒されます。作品いっぱいに人物やモチーフが躍動しています

 大きな絵を描くということ。それはともすれば、部分と全体の調和が破綻する恐れがあります。常に全体をイメージしつつ、部分を仕上げていく。部分から全体を修正していく。そんな作業を龍子は繰り返したのかもしれません。

日々の営みの中では、ついつい目先のことに追われるばかりですが、その日々がどんな意味を持つのか、自分はどんな「大きな絵」を描いているのか。そんなことを考えさせされた龍子記念館訪問でした。

理事 仙頭 正輝